夏の大会が終わった、
お祭りの後の静けさ、
金木犀の香りに気づく、
そんな気持ちはもう疾うに置いてきてしまった。
九月二十二日
私は靴を履き、部屋を後にした。
電車に揺られること数時間、
幼い頃に遊んだ湖にたどりついた。
泡ぶくを吐き出すと、簡単に足がついた。
今、夏の忘れ物を取りにゆく。
ただ、筆を濡らした
濁ったバケツにうつる
街の夜灯りだけが綺麗で
さぁさぁ、皆さま手の鳴る方へ
夢の間に誘われて
深く、淡く、知らず逃げてた
あぁ、溜息が
燻った僕の喉で
火花を散らす
あぁ。
「まだ君の言葉を手に取って聞けたころ
過ぎ去る時間を絵に捧げていた
君の言葉を笑っていたのは誰でもない
僕だったじゃないか。
『頑張れ』なんて下手な励ましで
君の全てをわかった気になって、
後悔したって今じゃもう
こんなしわのある愛ですら伝わらない。
君がよく腰掛けていた窓の縁を
窓のそばにある描きかけの絵を
描きかけの絵に残った君の魂を
今じゃただ眺めるだけ。
これが愛かも魂かもわからない。
全ての価値観が僕の自由だ。
なら魂だって愛だって
彼女の心もきっとあるはずだ。
ドロドロになった僕の心臓の中に
必ず
君の残した手紙を読んで
漸く気がついた
僕はただ君の言葉が
聞きたかったんだと
あの時の自分に
訊いてみろ
こんなこと信じないだろうぜ
あいつの魂がこの目で見えるってな
唄になる前、死際にやっとわかる
君に明かした胸の内が
馬鹿馬鹿しいじゃないか。
君の記憶に
切った言葉ひとつ
分からないふりをした
僕がひとつ
僕の言葉が届かなかったから
あのとき君は死んだのか?
思い出した日々の全てに
p class="p1">君がいる
あの夜も
君の絵も
この部屋も
この口も
この涙も
この体も
全て燃やしてしまいたい。
僕だって逃げているのか、
ふざけるな、わかってんだそんなこと。
ただ君の描いた絵が見たい。
君の笑う顔が見たい。
君だけを
記憶に残したい。
苦しさも辛さも欲望も感情も罪もその言葉も全て
俺のものだ。
花になる前、死際にやっとわかる
言葉ひとつが大切だなんて
馬鹿馬鹿しいじゃないか。
僕の記憶に
君立つままに空を
切った言葉ひとつ
分からないふりをした
今はもう君がいなくなった部屋で、
あの時からバケツに溜まったままの
思い出した日々の全てに
p class="p1">水に映った月を眺めた。
浅い呼吸を繰り返したあとで気がついた。
僕の言葉の軽さ、君の言葉の重さ、
時間が纏わりついた僕の価値観。
p class="p1">その意味の無さ全て馬鹿らしい
言葉というものは結局のところ、
どんな言葉かではなく誰がかけた言葉かだろう。
窓を一瞥し、僕は今
p class="p1">靴を履いた。
唄になる前、死際にやっとわかる
君に明かした胸の内が
馬鹿馬鹿しいじゃないか。
君の記憶に
霧立つままに空を
切った言葉全て
p class="p1">分からないふりをした」
Maru -『青年は湖の中で』
01 overture
02 言霊 - ghost in the moon ~
私は言葉が嫌いだ。
一つの言葉を除いて、嫌いだ。
「世の中には言葉なんかよりも美しいもので溢れている」
これは生前、彼が事ある毎に云っていた言葉。
私は、この言葉だけが価値のあるものだと信じて生きている。
そんな生き方すらも今では馬鹿馬鹿しい。
ただ、靄のように鬱陶しく忘れるに忘れられない。
それでいて私の叫びをかき消してしまう。
そんな言葉だ。この作品は、二人の絵描きの苦悩、そして生死がテーマになっている。
言葉を馬鹿にする奴が考えたこの歌詞、この言葉からそれらが見出され、聞き手の感性に収まるのかもしれない。
この言葉ですら馬鹿馬鹿しいとは思わないか。
Words and Music:Maru https://twitter.com/Maru_creation
・Credit Recording:露崎悠 https://twitter.com/tsuyuzaki_yu
Vocal:Sachi https://www.instagram.com/sachi_fruit/?hl=ja
Drums:Tsuji https://twitter.com/abevi6464
Trumpet:Natsuki https://www.instagram.com/natsu._.artcraft/?hl=ja